蒼海の砦とその周辺
ヴァルマリオンの国内の地図です。
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ヴァルマリオン城
ヴァルマリオンの中心にそびえる皇帝の居城は、「白鉄の城」の異名で知られる巨大建造物です。魔動機文明時代に築かれた砦を基盤としており、それを増築し国の象徴としています。鋼鉄と魔動機構造体を組み合わせたその外観は、まさに機械文明の名残と現代の意志を象徴するものとなっています。
城の構造は非常に堅牢で、外敵の侵入を想定した防御機構が随所に組み込まれています。塔状にそびえる中央部分には皇帝の私室と謁見の間があり、その下層には政務を執り行うための会議室や文書庫、儀礼の広間などが設けられています。要塞として機能するよう、魔動機関による防衛装置や避難路も完備されています。
建物の装飾は質実剛健な中にも洗練があり、内装には近隣諸国から取り寄せた木材や工芸品もふんだんに使われています。特に皇城正面の大広間は、鉄と魔晶石を組み合わせた大シャンデリアが印象的で、来賓を迎える際の荘厳な雰囲気を演出しつつ、緊急時にはそこからマナを供給する役割も持っています。
"蒼海の皇帝"アスピド・ヴァルマリオンはこの城で政務に励む一方、年に数回、国民との謁見や式典も行います。その際には城の外庭が一般に開放され、住民たちはこの壮麗な建造物を間近に見ることができます。
ヴァルマリオンという都市そのものを体現するようなこの城は、国家の象徴であると同時に、軍事・政治・文化の中枢として、都市全体の機能と意志を集約する存在となっています。
行政庁・貴族街
皇帝の居城を取り囲むように広がっているのが、行政庁と貴族街の区域です。この一帯は、国家運営の中枢を担う官庁と、帝都の中でも特に格式高い家系が居を構える高級住宅街とで構成されています。
行政庁舎は、遺された魔動機文明時代の技術を使った鉄骨造・石造建築で、都市の法や税、治安、外交に関する手続きが日々行われています。中央政務院や対外連絡庁、"五人会"の経済部門を担当する『シエラ・マルセリナ』をトップに置く財務局などがここに集中しており、都市の機能を支える頭脳部ともいえる場所です。
一方、貴族街は城や行政区画の機械的な雰囲気とは異なり、美しい街路樹と整備された石畳が印象的な、静謐な街並みが特徴です。この区域に邸宅を構えるのは、長い歴史を持つ名家や皇帝に仕える高位貴族たちであり、それぞれの屋敷は芸術品のように美しく装飾されています。外壁に使われる石材や屋根瓦、門扉の意匠には家ごとの象徴や格式が表れており、街を歩くだけでもその違いを楽しむことができます。
また、区画内には貴族向けの私設図書館や講堂、神殿も点在しており、教養と信仰を重んじる雰囲気が漂います。一般人の立ち入りは制限されているものの、一部の通りや施設は特別な行事の際に開放されることもあり、その際には多くの住民や観光客が優雅な街の雰囲気を楽しみに訪れます。
沿岸要塞〈ダンザール潮砦〉
ヴァルマリオンの海辺に築かれた沿岸要塞は、都市の軍事力の中枢を担う重要な防衛拠点です。軍務院と常備軍の駐屯地を兼ねており、有事の際には迅速な部隊展開が可能な構造となっています。"五人会"の軍事部門を担う『レオヴィクス・ヴァルガード』は、平時はこの要塞で指揮を執っています。
要塞は分厚い石造の城壁と鉄やマナタイト製の防盾、魔法障壁によって守られており、"異大陸"からの攻撃に備えた設計が施されています。見張り台からはダンザール海一面を、天候によってはイルサン島や混沌海までを一望でき、昼夜を問わず監視の目が光っています。最上部には通信用魔動機が設置されており、皇帝の居城や国内の他拠点との連絡を即座に行うことができます。
施設内には戦略会議室、軍法廷などが集約されており、平時にも緊張感のある空気が漂います。中でも、魔法使い部隊と工業区の技術士が協力して管理する兵器開発区画は、一般人の立ち入りが厳しく制限されている最重要区域です。
また、沿岸部には海軍用の桟橋と補給施設も備えられており、民間の港とは異なる軍専用の航路が整備されています。訓練航海の様子や出航前の準備風景は、遠巻きながら見物する住民の姿も見られます。近海には漁船の護衛も兼ねて、常に軍の魔動船が配備されています。
青海のカモメ亭
港湾地区にそびえる「青海のカモメ亭」は、不夜城塞ヴァルマリオンにおける国営の冒険者ギルド支部のひとつです。魔動機文明時代の意匠を残した石造りの建物で、要所に組み込まれた魔動機の装飾は、この国の歴史や文化を感じさせます。
1階はギルドの中枢業務を担うエリアで、依頼の受注や報告、物資の管理、外部との連絡調整などが行われています。2階以上は従業員や登録冒険者のための居住区となっており、長期滞在を希望する者や都市防衛任務を担う者が生活の拠点としています。簡素ながら必要十分な設備が整っており、酒場や共同浴場、読書室なども利用可能です。
ギルドを取りまとめるのは、"親カモメ"の異名で有名なギルドマスター、ケロンです。自らを「永遠の18歳」と称する彼女は、物腰柔らかく、カウンター席でうたた寝をしながらも、ギルド内の動向をさりげなく見守っている姿がよく見られます。冒険から帰還した者には必ずといっていいほど声をかけ、その日の冒険譚を興味深そうに耳を傾ける様子が印象的です。
依頼は交易路を通る商人の護衛、湾岸部や魔動農園の警備、魔物の対処などの初心者向けのものから、高レベルになると都市を狙う蛮族や"異大陸"の侵略者との戦いもあり、新しい冒険者をいつでも心待ちにしています。
工業区〈工鳴街〉
ヴァルマリオン南部一帯に広がる〈工鳴街〉は、金属加工や魔動機械の生産・開発を中心とする工業区です。その名の通り、昼夜を問わず鉄を打つ音と作業用魔動機の唸り声が街の空気を震わせるこの区画では、大小さまざまな工房や加工所、研究施設が密集しており、技師や鍛冶師、魔動機師たちが日々その腕を振るっています。"五人会"の技術分野担当、『メイア・フリーバリ』はこの一帯を管轄しており、マギテック協会やライダーギルドもここに建っています。
通りを歩けば、熱気立ちこめる鋳造場や、試作魔動機を試運転する軌条式の走行実験場、持ち込まれた部品を解体し再構成する整備場など、"動き続ける街"の姿を見ることができます。建物は増築が繰り返されており、歪な形をしたものも少なくありません。
専門性と火薬臭の濃い場所ですが、冒険者にとっては武具や装飾品、さらには魔動機騎獣の入手先として欠かせないエリアでもあります。区画内には冒険者向けの改造工房やオーダーメイドの鍛冶屋も数多く存在しており、職人気質ながら親身な対応をしてくれる店主たちが揃っています。
変わったところとしては、魔動機文明時代に遊ばれていた遊戯機械を体験できる〈ワーカーズハウス〉や、サウナ室と人工温泉を備えたトレーニングジム、魚や肉を長期間保存できる巨大冷凍倉庫など、一般住民が活用できる場所も数多く存在します。中でも、特殊な熱で暖められた天然の岩盤の上に寝そべり、じっくりと汗を流す蒸し風呂は人気が高く、下町から足しげく通う者もいるほどです。
建王記念公園〈赤星苑〉
ヴァルマリオンの中央区北に位置する〈赤星苑〉は、歴代皇帝の偉業を讃え、民に記憶と誇りを刻むことを目的として整備された国立の記念公園です。一辺1キロ弱におよぶ敷地は、都市の中における貴重な自然空間であり、人工水路や風力魔動装置によって管理された穏やかな空気が流れています。
苑内の中心には、〈大破局〉においてこの地を救ったという第三皇子の像がそびえています。この像は特殊なイグニダイト鋼を混ぜて鋳造されており、日の光を浴びると赤く輝くことから《赤星》の名が与えられたと伝えられています。
公園内は、記念碑や彫像のほか、歴代の皇帝と重要事件を記した回廊型の展示庭園、皇帝直筆の詔勅の複製を掲げた閲覧堂などがあり、散策をしながらヴァルマリオン帝国の歴史を辿ることができます。これらは"五人会"の中でも歴史に詳しい、法務担当の『ザイン・ドラケンホフ』によって検閲・校正が行われています。詩人や芸術家の手による碑文や噴水彫刻も多く、国民にとっては憩いと教養の場として親しまれています。
夜間には魔動灯を用いたライトアップが施され、幻想的な雰囲気の中で歴史的情景を再現する光の演出が楽しめます。このため、夜の散策コースとしても人気が高く、観光客にもよく紹介される名所の一つです。また、年に数度、季節の祝祭日や建国記念日には記念式典や国民参加型のパレードが開催され、公園一帯が華やかな祝祭空間となります。
中央市場
ヴァルマリオンを縦断するメインストリート沿いに広がる市場は、国民の生活と交易を支える中枢です。広場型の中央市場と、その南北に屋根付きの商店街、さらに細い路地に広がる露店街とで構成されています。
中央市場は、時間帯によって顔を変えるのが特徴です。日の出から午前中にかけては、魔動農場の野菜や漁で獲れた魚をはじめとした食材・日用品を扱う生活市が主となり、昼過ぎから夕刻には遠来の商隊や交易船の荷が並ぶ交易市、そして夜間には灯火に妖しく包まれた夜市が立ち上がります。
取り扱われる品はじつに多種多様で、ウルシラ全土から運ばれてくる特産品・香辛料・魔動部品・魔法のアイテムに加え、各国の料理や工芸品なども市内で手に入れることができます。南北の商店街には、魔動機文明時代のパーツを専門に扱う古物屋や、魔法薬の調合師が出店する試飲台付きの薬屋などもあり、これらは冒険者にも人気の高いスポットです。
月に一度の〈大市〉の日には、北東にあるゴーント地方の島々のものをはじめ、アルフレイム大陸南東部や、南西部ブルライト地方などの物品が魔動船によって数多く輸入され、国際交易の舞台となります。これだけの地方の品を手配できるのは、ひとえに"五人会"の外交担当である『アルベルト・シュタイン』の手腕によるものです。またこの日には、特設の円形舞台で大道芸や見世物、時には公的な布告や演説も行われるため、都市全体が祝祭の熱気に包まれます。
治安維持には軍とギルド連合が協力して当たっており、市場内は安全に保たれています。加えて、一部の高級区域では持ち物鑑定用の魔動識別器なども設置されており、旅人や異国の商人にも優しい設計がなされています。
魔動農場
城塞都市ヴァルマリオンの外縁から北西の平地に広がる農場は、魔動機の技術を活用して開拓が進められている特別開発区です。かつては不毛の荒地とされていたこの地も、魔動灌漑装置(まどうかんがいそうち)の導入により、徐々に生命の息吹が戻りつつあります。
この場所は、試験的な開拓と畜産業を組み合わせた小規模な農業区域として整備されており、実験性の強い場所として知られています。牧畜に関しては山羊や羊、小型牛などの飼育が中心となっており、乳製品や干し肉、毛織物などがこの農場から国内へ供給されています。
農作物に関しては、土壌の制約と気候条件から量は限られているものの、改良された作物や、魔動機によって温度調整された実験温室での栽培が進められており、都市の食料事情における重要な研究拠点ともなっています。最近では、魔力を帯びたキノコ類や、耐凍性をもつ薬草の栽培などが冒険者の間でも話題になっているようです。
農場周辺には、研究者や技術者の小規模な居住区もあり、日々さまざまな試みが行われています。時おり一般住民を対象とした見学日が設けられることもあり、都市の未来を担う教育の一環としても機能しています。反面、都市部の防衛力が及ばない地帯でもあるため、動物や妖魔などの襲撃にも遭いやすく、それらの討伐依頼があとを絶ちません。
農作物は依然として輸入に頼らざるを得ない状況ではありますが、この場所での取り組みは自らの力で食の一端を支えるという意志の表れでもあります。今はまだ実験と努力の段階ではあるものの、この地の挑戦が将来の礎となる可能性は十分にあるでしょう。
公共訓練場
冒険者ギルド〈青海のカモメ亭〉のすぐ北、沿岸要塞の外郭に沿うように設けられている訓練場です。かつて城塞防衛のために建設された簡易防壁を転用したこの施設は、現在では兵士や冒険者、国民らが技術を磨くための場として広く開放されています。
屋外の鍛錬場を中心に、数棟の訓練用施設と倉庫群からなる実践的な設備群で構成されており、訓練区域の一部は模擬戦専用の戦場や射撃場、魔法行使実験区画などに区分けされています。
利用者層は非常に幅広く、駆け出しの冒険者からベテランの軍士、さらには魔術師ギルドの術者たちまでが日々鍛錬に励んでいます。特に冒険者にとっては、依頼の準備や仲間との連携確認を行う定番の場所となっており、定期的に模擬戦大会や技術披露の演習会も開かれるなど、情報交換と実力証明の場としても機能しています。なお、このときは事故で死傷者を出さぬよう、致命的なダメージを無効化する魔動装置でセーフティがかけられることが大半です。
施設の維持と安全管理は、近場にある沿岸要塞から派遣された兵士たちが担当しており、未熟な者が無謀な訓練に及ばないよう、入場時の簡易査定や注意喚起もしっかりと行われています。訓練場の外周には見学用の観覧台も設けられており、国民が熱心に腕試しの様子を見守る姿もよく見かけられます。
貧民街〈夕靄通り〉
ヴァルマリオンの城壁の外、西の下町はずれからひっそりと広がっている場所が、〈夕靄通り(ゆうもやどおり)〉です。ここは、都市の急激な発展と人口流入の中で居場所を見失った人々が流れ着き、次第に形成された場所です。
下町の石畳の街路が砂利道に変わり、住居も煉瓦造りから粗末な木造や掘っ立て小屋へと移り変わるこの区域では、日々を生き延びることそのものが一つの冒険です。多くの住民は"無尽採掘場"の日雇いや物乞い、魔動部品の拾い屋、非正規の運搬業などで細々と暮らしており、子どもたちの多くも路上で育ち、早くから知恵と度胸を試される生活を送っています。
一方で、この場所は国の"闇"を象徴するだけではありません。小さな施療院や無料で食事を振る舞う炊き出し所、識字を教える簡易学校など、善意から立ち上がった小規模な施設が点在しており、住民同士の支え合いも根強く残っています。スラムだからこそ芽吹く「人のつながり」と「したたかな生き方」が、この地には確かに息づいているのです。
また、貧民街近くの下町は、都市のあらゆる情報が交錯する裏社会の出入口としても知られています。遺跡ギルドや情報屋も存在し、物静かな古書店の地下で密談が交わされたり、路地裏では不可解な取引が行われたりと、都市の"表"では決して見えない世界が広がっています。この国を狙う蛮族たちの連絡拠点が潜んでいるという噂も、あながち根拠のない話ではないでしょう。
西部下町
ヴァルマリオンの城壁の外、北部と西部には下町があります。この一帯は魔動機の恩恵が比較的限られており、土と石に煉瓦、木の温もりが感じられる街並みが広がっています。市場に並ぶ品も、保存の効く干物や地元産の乳製品、輸入された香辛料や布地など、実用と工夫を重ねたものばかりです。
とはいえ、この街区が完全に魔動機と無縁というわけではありません。街角には魔動式の街灯が設置され、夜道を照らし、いくつかの家屋には小型の魔動ストーブや冷蔵機が導入されています。こうした設備は、中心街から払い下げられた旧式のものを住民たちが修繕して使い続けている場合も多く、技術と暮らしの折り合いが上手く取られています。
西部の下町は北部に比べて雑多で、生活水準もやや低めです。"無尽採掘場"での鉱夫仕事と、それに従事する者へのサービス業が住民の主な収入源となっており、大通り近くには大衆酒場や公衆浴場、裏通りの歓楽街にはカジノや夜の店などが立ち並びます。荷運びの雇われ仕事も多く、街の物流の一部を担っているとはいえ、不安定な労働環境と低賃金ゆえに貧富の差も広がりがちです。
北部下町
ヴァルマリオンの城壁の外、北部と西部には下町があります。この一帯は魔動機の恩恵が比較的限られており、土と石に煉瓦、木の温もりが感じられる街並みが広がっています。市場に並ぶ品も、保存の効く干物や地元産の乳製品、輸入された香辛料や布地など、実用と工夫を重ねたものばかりです。
とはいえ、この街区が完全に魔動機と無縁というわけではありません。街角には魔動式の街灯が設置され、夜道を照らし、いくつかの家屋には小型の魔動ストーブや冷蔵機が導入されています。こうした設備は、中心街から払い下げられた旧式のものを住民たちが修繕して使い続けている場合も多く、技術と暮らしの折り合いが上手く取られています。
北部の下町は、都市の生活を支える漁業の中心地でもあり、東の海岸沿いには大小さまざまな漁船が並ぶ港があります。ここでは漁師たちが、昔ながらの木造帆船や、魔動機を取り付けて改造された動力船などを使い分け、ときには軍の船に守ってもらいながら、日々漁へと出ています。北の街道はユルナ湾方面へと続いており、そこからエユトルゴ騎兵国との海路が開拓されているため、商人たちの出入りも多いようです。
無尽採掘場
ヴァルマリオンの城壁を越えて南から地下に広がるのが、〈無尽採掘場〉と通称される広大な鉱脈です。この地からは鉄や銀・銅をはじめ、大理石や玉石、マナタイトにイグニダイトなど、数々の金属や魔力鉱石、燃料資源などが次々と採掘されています。都市機構を維持するための魔動装置や防衛装備、魔動灯に至るまで、多くの基盤がここで支えられているのです。
採掘場は帝国直轄の管理体制下に置かれており、職員・採掘夫・技師たちが日夜交代制で働いています。また、採掘の進行に伴って自然洞窟や古代の遺構に接触することもあり、冒険者の立ち入りが定期的に認められている調査エリアも存在します。中には、魔動機文明時代の工房跡と思しき構造物や、動かぬ機械の群れが出土したという報告もあるほか、魔法文明時代の遺跡や神紀文明の文字が発見されることもあり、資源以上の価値が眠っている可能性もあるとされています。あらゆる鉱物資源が無尽蔵に出てくるこの鉱脈は、一説では古代の儀式の産物であるとも。地中深くにある魔剣によって形成されているとも言われており、国外はおろか、上級蛮族たちからも注目されています。
一方で、掘削による魔力の乱れや地熱の影響、迷宮化する坑道、地下生物の出現なども頻発しており、常に危険と隣り合わせの現場でもあります。こうした危機に対応するため、冒険者が定期的に雇われるほか、現場に常駐する神官の姿も見られます。
また、無尽採掘場の内部には仮設居住地が点在しており、働く者たちやその家族、行商人たちの小さな共同体が生まれています。食堂や雑貨屋、簡易宿泊所などが立ち並び、一種の"採掘者の街"としての顔も持ち合わせているのが特徴です。
魔動と金属、命と危険が交差するこの採掘場は、都市ヴァルマリオンの"命脈"と呼ぶにふさわしい場所のひとつと言えるでしょう。
不夜の門
ヴァルマリオン南部、工業区の城壁を貫くようにして建つ〈不夜の門〉は、この国を象徴する名所です。もともとは戦勝記念碑として建てられたこの門は、魔法文明時代風の意匠を凝らした外装となっており、それが夜に煌々と灯る照明に照らされることで、独特の美麗さと妖艶さを醸し出します。
門を潜った先はすぐに南商店街となっています。周囲には飲食店や装飾品、香料、珍しい金属細工などを扱う露店が立ち並び、歩くだけでも目と鼻が楽しめる華やかな通りが続きます。特に夕暮れ時からは屋台の明かりが加わり、門前は一層にぎわいを見せます。
〈不夜の門〉を通行するのは、南方地域から訪れる商人や旅人だけではありません。南東に位置する「帝国武器庫街」から、兵器やパーツを積んだ輸送魔動機が門を経由して工業区内部へと入ることも日常的にあり、その様子はまるで行進のような壮観さを帯びています。城塞の都市機構を支える一幕として、観光客からも人気のある光景です。
門の設計にも注目すべき点があります。城壁の一部として組み込まれており、内部にはらせん階段が備えられているほか、有料の魔動昇降機(エレベーター)も完備しています。最上部は展望台として整備されており、西方の〈無尽採掘場〉や東の〈ダンザール潮砦〉、工業区全体を一望することができます。特に夕暮れや夜景の時間帯は、灯りに照らされた工業地帯が幻想的な姿を見せ、観光客や地元の若者たちのデートスポットとしても定番です。
門の正面からは、ヴァルマリオン城の天頂部分がちょうど視界に入る構造となっており、訪れる者にこの都市の象徴たる城塞の存在感を強く印象づけています。
魔動体験店〈ワーカーズハウス〉
かつて魔動機の復元作業に心血を注いだ技師たちが、日々の過酷な労働と向き合う中で正気を保つ術として――あるいは、かつての栄光の残滓にすがるように――密かに息抜きの場として築き上げたのが、この〈ワーカーズハウス〉と呼ばれる不思議な館です。
内部には、魔動機文明時代に作られた娯楽用筐体が数多く並び、訪れる者をかつての文化の奔流へと誘うと言われています。画面の指示に従って身体を動かし踊る筐体、奇妙な譜面を叩いて音を奏でるもの、操縦席に乗り込み敵影を撃ち落とす戦闘筐体など、その内容は多岐にわたっています。
特筆すべきは、それらのほとんどが後世の模倣品などではなく、正真正銘、魔動機文明の当時に実際に製造されていた"本物"を修復したモノであり、それゆえに、〈ワーカーズハウス〉は過去の娯楽文化を生きたまま封じた、極めて貴重な資料庫でもあります。
この事実に目をつけたのが先代皇帝です。魔動機文明の技術を辿る手がかりとして、館の収蔵物を国家のもとに回収すべく動いたものの、長年にわたりそれらを修理し、愛情を注いできた技師たちの激しい反発に遭います。彼らは作業のボイコットを宣言し、さらには周辺住民までもが「ここは心の拠り所である」として反対声明を発したことにより、計画は事実上の頓挫を余儀なくされました。
それ以降、表立った干渉こそ無くなったものの、国家上層部や研究機関の関係者がこっそりとこの館を訪れ、実際に筐体を体験しては"過去の感触"に思いを馳せているという話も、今や決して珍しいものではなくなりました。
目に見えぬ情熱と、忘れ去られた文明の残響が入り混じる空間。〈ワーカーズハウス〉は今日もまた、魔動技師たちの奇妙な愛と誇りを静かに鳴らし続けています