世界観

ウルシラ地方の南西、ダンザール海に面した城塞都市ヴァルマリオン。

この国には魔動機文明の文化が深く根付いており、建築物には鉄製のものが多く見られ、

街灯をはじめとした公共設備の多くに魔道具が使用されている。

そのため、夜でも魔道具で街は明るく、「不夜城塞」との異名を持っている。

歴史

魔動機文明時代──「監視の砦」の始まり

遥か昔、魔動機文明の繁栄の時代。当時、内陸に広がっていた【帝国】は、ダンザール海を越えて迫る外敵を警戒して、海沿いに監視のための砦を築きました。砦は海上を見張るための哨戒拠点にすぎず、街というほどの規模も持っていませんでしたが、魔動機による設備が整えられた堅牢な構造を持っていました。

大破局──帝国の崩壊と異変の始まり

やがて、大破局が世界を襲います。大地は裂け、文明は崩れ、多くの国々が姿を消しました。かの【帝国】もまた、その混乱の中で滅び、海辺の砦は本国との連絡を絶たれ、孤立することになります。同時に、ダンザール海の沖合に突如、新たな大陸が姿を現しました。そこから現れたのは、正体不明の異形の種族。突如として彼らは、ウルシラ地方への侵攻を開始します。

試練の時代──蛮族と侵略者、二重の脅威

砦に残された兵たちは、かつての帝国の命令も支援も受けられないまま、蛮族と新たな異形の侵略者、二つの脅威に対処しなければなりませんでした。士気は低く、物資も限られ、生存すら危ぶまれる状態でした。

第三皇子の登場──戦乱の英雄

その混乱の只中、砦に新たな守衛隊長として任命されたのが、帝国の血を引く第三皇子です。彼は驚くべき統率力と冷静な判断力を発揮し、兵士たちを鼓舞して戦線を立て直します。巧妙な戦術と鉄の意志により、ついには蛮族と侵略者の両勢力を撃退し、砦の防衛に成功します。

帝国の消失と再起の決意──「砦」から「都市」へ

しかし、防衛に成功したものの、大破局で帝国が滅びを迎え、皇子にはもはや帰るべき国はありませんでした。それでも彼は過去に縛られず、未来を見据えます。砦に残された兵士と民、そして機械仕掛けの施設たち。それらを使って、この地に新たな防衛都市を築くことを決意したのです。これはただの再興ではなく、未知の侵略者と対等に渡り合うための、新たな拠点の誕生でした。

志の継承──城塞都市の完成

第三皇子は生涯をかけて都市の建設に尽力しましたが、その完成を見る前に世を去ります。けれども彼の意志はその子へと引き継がれ、やがて防衛設備を備えた城塞都市がついに完成を迎えます。都市は発展を続け、地下の鉱脈や海の恵みを糧に、今では技術と産業の都としても栄えています。そして現在も、かつて現れた異形の侵略者たちは健在。この城塞都市は、彼らと対峙する最前線として、不屈の意志を灯し続けているのです。

人口

人口

この都市の総人口はおよそ3万人に達しており、その構成はきわめて多様です。未知の侵略者に対抗するという使命を掲げるこの地は、国内外から傭兵や放浪者、技術者、魔術師といった実力ある個人を積極的に受け入れてきた歴史を持ちます。そのため、種族の隔たりが小さく、人間、エルフ、ドワーフをはじめ、様々な出自を持つ者たちが混在して暮らしています。

特殊な種族

特筆すべき存在として挙げられるのが「マシーナリー」と呼ばれる機械の身体を持つ者たちです。かつての魔動機文明期に創られたとされる彼らは、今なお都市の各所で活動しており、労働力や警備、場合によっては戦闘要員として重要な役割を担っています。無機質でありながら高度な判断力と技術を備えた彼らの存在は、都市の景観と文化に独特の近未来的雰囲気をもたらしています。

都市の特色

この都市に暮らす人々の多くは、戦う術を持っていることも大きな特徴のひとつです。これは、建国の経緯に深く根ざしたものであり、都市そのものがかつて要塞として再興された歴史を背景に、民間人であっても有事に備えて自衛の技術を習得している例が少なくありません。特に「魔動機術」に関しては、この都市の教育機関や職能ギルドによって体系的に教えられており、民間レベルでもその扱いに長けた者が多数存在します。

文化

国交

この都市は、未知の侵略者に対する最前線の防衛拠点であると同時に、ウルシラ地方有数の鉱石産出地としてもその名を知られています。防衛と経済の両面において重要な地位を占めており、地方各国との戦略的な連携はもとより、遠方のハルシカ協商国とも交易や技術交流が継続的に行われています。これにより、都市は単なる軍事要衝にとどまらず、国際的な資源・文化の集積地としても機能しています。

建築様式

地下鉱脈から豊富に産出される鉄を構造材として用いた堅牢な建造物が街並みに重厚さをもたらしており、そこに、近隣諸国から輸入された木材が柔らかな質感を添えることで、機能性と温もりが共存する独特の景観が形成されています。防衛施設や工房群は無骨で重厚、対して居住区や市場周辺では木材を活かした意匠が施され、都市全体に緩急のある美観を与えています。

食文化

地理的条件から農業には適しておらず、都市の食料自給率は低く抑えられていますが、それを補うように漁業や畜産業が一部で営まれ、基礎的な食材の供給は維持されています。それでもなお食料の多くは輸入に依存しており、この状況が都市の食文化に大きな影響を与えています。固有の郷土料理や伝統的な食習慣はほとんど存在せず、代わりに周辺諸国から流入した料理や調理法が広く受け入れられ、食堂や市場には多様な地域の食文化が共存する、まさに"食の交差点"とでも呼ぶべき賑わいが見られます。こうした多国籍性は、都市に暮らす人々の舌と心を豊かにすると同時に、交易都市としての魅力を高める一因ともなっています。

生きた魔動機文明

魔力と技術が融合した魔動機術は、戦闘だけでなく日常生活や産業にも応用されており、都市全体に"生きた魔動機文明"としての側面を色濃く残しています。このような文化的・技術的背景は、外部からの訪問者にとって大きな驚きであると同時に、この都市を唯一無二の存在たらしめる根幹となっています。

産業

輸出品

この国における重要な輸出品の多くは、地下鉱脈から産出される鉱石を精錬・加工した製品です。特に、装飾品や武具は高い評価を受けており、国内に籍を置く名工たちの手によって丹念に作り上げられたそれらの品々は、近隣諸国の市場でも広く取引されています。

装飾品

装飾品に関しては、金属細工だけでなく、地中から採れる希少な宝石を用いた精緻な細工が特徴であり、貴族や富裕層の間で人気を博しています。武具においては、実用性と美術性の双方を兼ね備えた品が多く、実戦における信頼性の高さから、多くの兵士や冒険者たちに重宝されています。

職人たち

この国における職人たちは、いずれも強い誇りと向上心を持ち、日々技術の研鑽に励んでいます。特に武具や魔動具の製作においては、各工房が互いに技と発想を競い合い、都市全体に職人文化が根付いていると言っても過言ではありません。この激しい技術競争こそが、製品の質の向上を生み出す原動力となっており、単なる実用品にとどまらず、芸術性すら感じさせる工芸品として、国外の目利きたちにも高く評価されているのです。

加えて、宝石を用いたアクセサリーや魔動具においても、その品質と美しさは定評があり、特に魔動機術と細工技術を融合させた複合製品は、この国ならではの独自性を持っています。魔力の制御や増幅を目的とした実用品でありながら、装飾としての完成度も高く、多くの依頼や注文が絶えません。

人造魔剣

大破局、それに未知の勢力の侵略を辛くも乗り越えたヴァルマリオンでしたが、消耗は甚大であり、また荒れ狂うこれからの時代を生き抜くべく、防衛力の強化は急務とされていました。そこで注目されたのが人工的に造り出される魔剣、『人造魔剣』です。戦前のように大規模な兵士の動員は難しくなり、少人数であっても多数に対抗できる力が得るためには『魔剣』という武器が最適だと考えられたためです。

魔動機文明時代に生み出された研究機器や製造設備などが蹂躙されることなくヴァルマリオンに残っていたこと、また外部から高度な技術を持った人材が避難してきていたこともあり、『人造魔剣』の開発は急ピッチで進められました。ヴァルマリオンの人々の懸命な努力の甲斐あって、『人造魔剣』はついに完成したのです。そしてその製法は国内における一定数の名声を獲得した技術者達に秘伝として継承されました。

現在、『人造魔剣』は高コストながらも脅威に立ち向かわんとする人々がその手に握り、ヴァルマリオンを守るべく日々振るわれています。

◇『人造魔剣』にまつわる噂

ヴァルマリオンで造られる『人造魔剣』には、興味深い噂が存在します。それは、この魔剣が一から開発されたものではなく、とある伝説の魔剣のレプリカであるというものです。魔動機文明時代に造られた第九世代魔剣とは異なり、ヴァルマリオンの『人造魔剣』は、この地に眠る「オリジナル」の魔剣を模して造られているのだと言われています。

さらに、この噂には続きがあります。ヴァルマリオンの地下深くに眠るという「オリジナル」の魔剣こそが、この国に豊富な鉱物資源をもたらしている源であるというのです。無尽蔵とも言えるほどの鉱脈が存在するのは、すべてこの魔剣の力によるものだという説が、一部の研究者たちの間で囁かれています。

もちろん、これらの噂は真偽のほどは定かではありません。多くの人々はこれを単なる面白い伝説として語り継いでいるだけです。しかし、中にはこの噂の真相を確かめようと、日夜地下の探索を続けている者たちも存在します。彼らは、もし本当にそのような魔剣が存在するなら、ヴァルマリオンの歴史と技術の起源を解き明かす重要な手がかりになるかもしれないと考えているのです。

国外

湾港の町《タルミュア》

ヴァルマリオンから北北西に続く街道を二日ほど歩いた先、ユルナ湾の南東岸にひっそりと広がる港町が、"タルミュア"です。人口はおよそ2000人ほどと小規模ながら、湾を越えた先に広がるエユトルゴ騎兵国との交易拠点として重要な役割を担っています。

町の構造は小ぢんまりとしていて、主に漁業、造船、商取引に従事する住民たちの住まいと、海に面した市場や倉庫、船着き場を中心に構成されています。町の中心には簡素ながら整備された木造の波止場と荷揚げ場があり、日々ユルナ湾を越え、北西のエユトルゴ騎兵国までを大小の交易船が往来しています。この航路は、エユトルゴ~ヴァルマリオン間の交易路の安全性と効率を両立する数少ないルートとして、多くの商人や旅人に利用されています。

というのも、東へ進みダンザール海へ抜ける航路は、海流の難しさに加え、水棲の蛮族による襲撃の危険が伴います。そのため豪商や軍用の大型船を除けば、一般的な渡航者や小規模の商団はこのタルミュアを経由する形での移動を選ぶことが多く、タルミュアは見かけ以上に交易による人の出入りが多くみられます。

タルミュアでは自警団が警備を兼ねて町の秩序を保っています。街中の施設や、遺跡などの探索場所などに乏しく、この町に冒険者ギルド支部は存在しません。よって蛮族の襲撃や犯罪行為、不審な事件が発生したさい、自警団で対応できなければ、ヴァルマリオンに依頼が送られることも珍しくありません。

魔動平原

ヴァルマリオンの周辺に広がるのが、広大な〈魔動平原〉です。見渡す限り地平線まで続く緩やかな大地には、背の高い木々はほとんど姿を見せず、膝丈ほどの草花が繁茂しています。季節によっては風にそよぐ草花の波が金色や緑の絨毯となって揺れ動き、その美しさは見る者の心を奪います。

この地は〈大破局〉での戦いによる影響で、長らく不毛の大地と化していました。ヴァルマリオン周辺における魔動農場の開拓から始まって100年近く経ち、今では平原全体に緑が戻ってきましたが、各所には戦火の跡が残る部分も多く存在します。

平原の中には、ヴァルマリオンとエユトルゴ騎兵国、アヴァルフ妖精王国連邦を結ぶ街道が走っており、要所には小さな村や宿場町が点在しています。それらは交易や巡礼、放浪を目的とする旅人たちにとって憩いの地であり、平原を行き交う者たちの交流の場でもあります。

この平原の各地には、魔動機文明時代の遺跡が数多く存在しています。特にヴァルマリオン周辺は、かつて第三皇子レオンハルトが侵略者や蛮族の侵攻を退けた歴史を持ち、その戦火を逃れたことで遺跡の破損が他の地域に比べて格段に少ないとされています。

これらの遺跡は外見こそ自然に浸食され、蔦に覆われた古びた姿を見せていますが、内部には今なお稼働可能な魔動機の部品や、当時のままの魔動機兵すら残されていることがあります。そのため、平原は夢を追う冒険者やトレジャーハンターにとって、まさに"金と危険の眠る宝庫"と呼ばれています。

しかし、貴重な部品や遺物を求めて集まるのは人族だけではなく、高位のバルバロスや、異大陸から流れ着いた侵略者の斥候らが同様の目的で潜んでいるという報告も後を絶ちません。浅はかな欲に駆られた者が命を落とすことも珍しくはなく、規模の大きな遺跡の探索には、熟練の冒険者の同行を前提とした慎重な計画が必要とされます。

レイダーズ・ハウス

魔動平原の最南部、視界を遮る丘陵を越えた先に姿を現すのが、〈レイダーズ・ハウス〉と呼ばれる巨大な魔動機文明の遺跡です。その全容は未だ明かされていませんが、遠目にも圧倒的な存在感を放つ鉄と石の要塞は、今なお魔動機文明の威光を物語っています。

この遺跡は現在、数多の蛮族たちによって拠点化されており、"魔動平原最大の蛮族勢力"であると目されています。内部は迷路のような回廊や広大な空洞が入り組んでおり、その中で数百を超える蛮族が闊歩していると噂されています。

しかしながら、その蛮族集団を従える上位蛮族たちは一枚岩ではなく、派閥が存在しています。彼らはこの地に眠る古の魔動機やその技術、"魔剣"の力を手に入れ、己の種族や一派の優位性を示そうとしており、ときには蛮族同士で争うこともあります。平原各地の遺跡へと調査部隊を送り込むこともあり、冒険者たちが彼らの配下と遺跡で遭遇し、血刃を交えるのも珍しい話ではありません。

また、『グリムギア』……異大陸からの侵略者たちもこの地を狙っており、たびたび蛮族たちと敵対しています。上位蛮族たちのほとんどは人族領域の侵略に興味がないため、場合によっては人族たちと利害が一致し、一時的に共闘関係を築くことすらあり得えます。

脅威

異大陸

〈大破局〉の混乱と共に、突如としてダンザール海沖に出現した"異大陸"――それは、空間そのものがねじれ歪んだ裂け目の向こうから、じわりと滲み出るように現れた未知の大地です。大きさは、同じくダンザール海に浮かぶイルサン島のおよそ半分程度と推定されていますが、その存在感は比較にならないほど圧倒的です。

大陸の中心には、まるで世界を見下ろすかのように聳え立つ、漆黒の巨塔――要塞とも神殿ともつかない巨大な構造物が建っており、その異様な存在感は遠く海上からでも確認できるほどです。その表面は鈍く黒光りし、まるで光を拒むかのように周囲を影で包み込んでいます。

しかし、それに反して大陸を囲む地表には一切の生命の気配がありません。乾ききった地面には草木の一本すら育たず、大地そのものが死を受け入れ、永遠の静寂に支配されているかのようです。風は吹けども土を舞わず、音なき世界がただ広がっている――まさに"死の大地"と呼ぶに相応しい場所でしょう。

その不気味な沈黙の裏には、かつて何があり、いかなる経緯でこの地が姿を現したのか。未だ多くが謎に包まれたままですが、その存在がラクシア世界にとって重大な脅威であることだけは、疑いようのない事実なのです。

侵略者『グリムギア』

大破局の到来と共にラクシア本土への侵略を開始したのが、『グリムギア』と呼ばれる一団です。ダンザール海に浮かぶ"異大陸"を本拠地としていますが、周辺に点在する小島に拠点を持つほか、転送装置を使用して直接ウルシラ地方に降り立つケースもあります。

外見は全身を機械で構成されたマシーナリーのような姿をしており、その体の多くは錆びつき、爛れ、歪んで変形しています。時折、体内からは何かが蠢くような不気味な音や、意味をなさない奇妙な電子音が聞こえてくることもあり、その存在は不気味そのものです。

彼らが使用する武具や兵器は、魔動機術に近しい構造を持つ機械兵器が主であり、その技術的特徴から、一部の学者たちは「かつてラクシアと何らかの繋がりを持っていたのではないか」と推測しています。

また、斥候部隊の報告によって、彼らの中には明確な階級制度が存在することが確認されています。階級を持つ個体の中には、こちらの言語を理解し、言葉を発する者もいたと記録に残されています。

確認されている階級

  • ポーン:下級兵士の指揮官です。基本的な戦術単位を指揮します。
  • ビショップ:複数のポーンを統括する下士官的存在です。
  • ナイト:ポーン・ビショップたちを束ねる将軍格の存在です。
  • ルーク:ナイトの中でも特に優れた者に与えられる称号で、高度な知性と指揮能力を持つとされます。

『グリムギア』との戦い

『グリムギア』は各々なんらかの記憶を持っているようで、その記憶に関連した場所や物品などに向かおうとする強い意志を持ちます。低レベルならばその道中にある障害は可能な限り排除しようとし、階級を持つ者であればある程度の会話や交渉を行おうとする姿勢も見せますが、"記憶"へ向かうという目的はいかなる場合でも辞することはありません。

その行動指針ゆえに、人族はもちろん蛮族や魔神やアンデッド、魔動機など、同じ『グリムギア』以外のあらゆるものは、目的の障害になると判断されれば即座に排除しようと向かってきます。逆に言えば、彼らの邪魔をしなければ攻撃を仕掛けられることはあまりないと思われています。ですが、どこからが彼らの「邪魔」になるかは個体によるようで、無辜の民が狙われることもある他、『グリムギア』の多くは何故かヴァルマリオンの地を執拗に狙い続けているため、基本的には相いれない敵として認識されています。